令和6年度入学式 式辞

式辞

皆様、富山大学への入学、誠におめでとうございます。教職員を代表して式辞を述べさせていただきます。本日、令和6年度入学式において、学部入学生1,860名、大学院入学生562名、総勢2,422名の皆さんを富山大学にお迎えすることができました。
皆さんとの新しい出会いの日を迎えること、私ども大学の教職員にとっては大きな喜びであり、富山大学を代表し、心よりお祝いを申し上げます。また、ご来賓の方々には、ご臨席を賜り厚く御礼申し上げます。

Since we have international students here today, I would like to give a short congratulatory message also in English.
First of all, as the president of the University of Toyama, I welcome you all and give my warmest congratulations.

富山大学は、文系学部として人文学部、教育学部、経済学部、芸術文化学部、理系学部として理学部、工学部、医学部、薬学部、极速体育直播,极速体育app、これらを合わせて9学部を有しています。さらに富山県で唯一の特定機能病院で高度な医療を提供する附属病院、和漢薬や和漢医療を研究する日本で唯一の和漢医薬学総合研究所、アルミ、マグネシウム、チタンなどの軽金属の社会実装を研究する共同利用?共同研究拠点である先進軽金属材料国際研究機構、ムーンショット研究に採択された未病を数理学的、生物学的手法を用いて科学的に証明する未病研究センター、睡眠時の脳の機能と記憶の定着を研究するアイドリング脳科学研究センター、伝統工芸と最新の3D技術を融合させたアートを実践する技藝院、CO2と水素からペットボトルになるパラキシレンやジェット燃料や車のタイアを製造するカーボンニュートラル研究を社会実装させるカーボンニュートラル産業創生研究センターなど、複数の教育?研究施設を持つ大学です。富山大学は、9,000名余の学生と2,300名余の教職員が集う総合国立大学です。
富山大学の歴史の原点は、現在の教育学部の前身となる新川県師範学校が発足した1875年/明治8年に遡ります。今年が発足後、149年目にあたります。その後2005年、当時の富山県内3国立大学(富山大学、富山医科薬科大学、高岡短期大学)が統合し、現在の富山大学が誕生しています。本年が統合後19年となり、学部間の融合教育、融合研究が進んできています。

The University of Toyama has nine schools: the School of Humanities, the School of Education, the School of Economics, the School of Arts and Design, the School of Engineering, the School of Science, the School of Medicine, the School of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences, and the School of Sustainable Design. And, our university has University Hospital, Institute of Natural Medicine, Institute of Light Metals, Research Center for Pre-Disease Science, Research Center for Idling Brain Science, Research Center for Cultural Property Conservation and New Creative Technologies, and Center for Carbon Neutral Creation Research. There are about 9,000 students and about 2,300 faculty members.
Our university was established in 1875. After that, Toyama University, Toyama Medical and Pharmaceutical University and Takaoka National College were integrated and was established to University of Toyama in 2005. This year marks the 19th year since the merger, and the integration of education and research between the schools has been progressing.
There are about 9,000 students and about 2,300 faculty members.

さて、本日富山大学に入学された皆さんは、富山大学でどのような事を学んでいくのだろうかという疑問があるかと思います。私から簡単に富山大学での教育について説明させていただきます。
学部入学生は、まず、1年生の教養教育を极速体育直播,极速体育appで一元化して行いますので、9学部の学生が一同に会して学ぶこととなります。どうか総合大学のメリットを活かして、学生同士の学部を跨ぐ交流を深めていただきたいと思います。これら学部間の交流は総合大学のメリットとなります。2年生以降は、五福?杉谷?高岡の3キャンパスに分かれて専門教育を受けることになります。

Let me briefly explain about education at the University of Toyama.
First, the liberal arts education of the first-year undergraduate students will be unified at the Gofuku Campus, so students from nine faculties will meet and learn together. It is my hope that you will take advantage of the benefits of a comprehensive university and encourage more cross-faculty interaction among students. From the second year onward, you will be divided into three campuses (Gofuku, Sugitani, and Takaoka) to receive specialized education.

さて、この数年で社会は大きく変化しています。いわゆる社会の転換期にあります。これまでの工業社会から、ポスト工業化社会、すなわち知識社会への構造転換が進んでいます。また自然資源を持続可能利用にするようにリサイクルを考えて設計した製品を作り、耐用年数を超えた製品を回収、分別し、品質を向上させるようにアップグレード化させるアップグレードリサイクルし、経済効果を得るように資源を循環させる事が求められています。またアイデアを用いる事で新たな産業が生まれており、ものづくりからアイデア活用社会に変化しています。日本では、これらの変化に遅れてしまったという反省があります。これらの課題を解決するために、日本では教育改革が求められています。これまでは個人よりも全体の学力を向上させることが求められたため、画一的な教育が行われ、卒業後は学力を向上させた個人、個人で課題解決してきました。一方、現在では、多くの事が高度に専門化されたため、基本的な学力に加えて、ある分野に特化した優れた能力ある人達が多職種で協力して、課題解決するように変化しています。そのため、大学では基礎的な学力の修得に加えて個人の特性を生かした能力を向上させる教育を行なうように変化してきています。社会ではすでに個人戦から団体戦で課題を解決する体制にシフトしています。

Now, society has changed dramatically over the past few years. We are in a so-called social transition. We are undergoing a structural shift from the industrial society of the past to a post-industrial society, in other words, a knowledge society. It is also required to create products designed for recycling to make sustainable use of natural resources, collect and sort products that have exceeded their useful life, upgrade them to improve their quality, and recycle resources to obtain economic benefits. New industries are being created using ideas, and society is shifting from a manufacturing-oriented to an idea-based society. In Japan, there is a reflection that we have lagged in these changes. To address these issues, Japan needs to reform its education system. Until now, uniform education has been provided, and after graduation, individual persons with improved academic skills have been able to solve problems. On the other hand, today, many things have become highly specialized, and this has changed so that in addition to basic academic skills, people with excellent abilities who specialize in a certain field work together in a multi-professional environment to solve problems. Therefore, in addition to the acquisition of basic academic skills, universities are changing to provide education that improves the ability to make the most of individual characteristics. Society has already shifted from a system of individual competition to a system of group competition to solve problems.

これらの新しい体制に適応するため、富山大学では、アクティブラーニング(課題解決型授業)、データサイエンス、英語教育の3つを特に重視して教育を行っています。まず、アクティブラーニングでは、解決すべき課題を異なる学部の仲間と話し合い、意見を出し合い、教員の意見を参考にしながら、具体策を立案するという形の講義です。高校時代の受動的な学びではなく、自らが積極的にデータ収集し、課題を抽出し、自分の意見のみならず学部の異なる学生の意見も取り入れ、総力戦で解決策を見つけ出すという「学び」です。大学での講義を通じて、自らの教養を高め、自らの意見を述べた上で、他者とのディスカッションを通じて企画、立案、解決策を見出し、人間性並びに総合知を高めていただきたいと思います。1年生で行なう課題解決型授業に加えて、2~3年生に行なう学部横断学授業では専門教育で学んだ専門性を活かした議論が可能となります。これらを学習することで新しいイノベーションが生まれ、社会を変革することにつながります。また社会に出てから、これらの経験はとても役に立ちます。若い人達の活躍がこれからの日本の発展には必須ですので、皆さん、富山大学で学び、すばらしい人材に育って下さい。もう一つの強化項目のデータサイエンスですが、データを収集し、それらを数理学的手法により解析するのみならず、課題を抽出し、解決策を見出し、多くの方に理解してもらうようにプレゼンテーションし、課題解決のため行動するという一連の過程をデータサイエンスと言います。富山大学では、极速体育直播,极速体育app度より、1年生全員にデータサイエンスを必修科目とし、令和3年度には、文部科学省からデータサイエンス?AIリテラシーレベルの認定を受け、令和5年度には、全国で21大学しか認定されていないリテラシーレベルプラスを獲得しました。データサイエンスを活用して社会の課題を解決したい方には、データサイエンス寄附講座を経済学部に開講しています。どの学部の学生も参加できるので、ぜひとも受講してみて下さい。富山県企業や自治体から持ち込まれた課題を、データサイエンスの立場から、複数の学部の学生と、データサイエンスに造詣が深い教員と、企業の社員と一緒に解決するという実践型教育です。また、高度専門情報人材育成事業にも採択され、令和5年度から大学院修士課程、博士課程でAI、生成AIも含めた高度情報を扱うトップ人材を育成しています。日本ではDX化の促進のため、特にデータサイエンス人材が求められていますので、きっと大学で学んだことが将来活かされると思います。

To respond to these new structures, our university is placing particular emphasis on three areas: active learning (problem-based learning), data science, and English language education. First, active learning is a form of lecture in which students share their opinions with their peers from different schools on issues to be solved and formulate concrete measures to solve them. This is not passive learning, but rather learning in which students actively collect data, incorporate not only their own opinions but also those of students from different schools, and find solutions through a concerted effort. Through university lectures, we hope that students will enhance their own education, plan, formulate, and find solutions through discussions with others, and enhance their humanity and overall knowledge. These experiences will be very useful when you go out into the society. The success of young people is essential for the future development of Japan, so I hope that all of you will study at the University of Toyama and grow up to be great human resources. Data science is a series of processes that involves not only collecting data and analyzing them using mathematical methods, but also identifying issues, finding solutions, presenting them in a way that many people can understand, and taking action to solve problems. The University of Toyama has made data science a compulsory subject for all first-year students from 2020. In 2021, the University was certified by the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology as a Data Science and AI Literacy Level, and in 2023, the University earned Literacy Level Plus certification, which is granted to only 21 universities in Japan. Also, the School of Economics offers a data science class in which students from any school can participate. This is a practical education program in which students from several schools, faculty members with a deep knowledge of data science, and company employees work together to solve problems brought to them by companies and local governments in Toyama Prefecture from the standpoint of data science. Furthermore, from 2023, our university is training top personnel to handle advanced information, including AI and generative AI, in the master’s and doctor’s programs of the graduate school. I am sure that what I learned at the university will be useful in the future, especially since data science personnel are in high demand in Japan to promote DX.

世界がグローバル化し、Webによる遠隔会議が簡単にできるようになったため、英会話は、社会人になってからビジネスや研究を行なう上で極めて重要となります。1年生の皆様は、入学直後にTOEIC試験を行い、現時点での英会話能力を判定します。大学で英語を学習した後、12月頃に再度TOEIC試験を行い、上達度をチェックします。これらの費用はすべて大学で負担します。昨年度、一昨年度はともに、試験の点数が大きく向上しました。3年生、4年生になった際にも再度TOEIC試験を行い、1年生と比較して英会話の上達度を確認してもらいます。成績優秀で希望者には、春休みを利用して富山大学の連携校である海外の大学へ短期入学していただき、海外の文化や教育に触れる機会を提供いたします。また、最大60名までに、富山大学基金から1名あたり10万円の海外留学の補助をさせていただきます。ぜひとも短期海外研修にチャレンジして下さい。英会話の自習システム(アルク)も使えますので、講義以外に自習で自らの能力を高めて下さい。
学問が高度に発展してきたため、従来の4年間の学部教育だけでは不十分で、大学院でさらに高度な専門知識を学ぶことが企業や社会から強く求められてきています。また修士や博士を取得した方々は社会で責任ある立場で活躍されています。富山大学では令和4年度に大学院修士課程を全面的に改組し、令和6年度には博士課程も改組しました。これまでの学部単独の大学院教育を撤廃し、複数の学部で大学院教育を行ない、総合知を学ぶように改組しました。例えば理系は医薬系、理工系、医薬理工融合学環、文系は人文社会芸術総合研究科にまとめ、さらに、文理融合学環である持続可能社会創生学環を新たに作り学部横断的な大学院教育を実践しています。これにより、学内で学部横断的な研究が進みトップ10%論文数は2年間で68%増加しました。さらに大学院生には、種々の奨学金制度を用意しています。そのような対応を評価していただき、予想を上回る学生に大学院に入学していただきました。本日、大学院に入学された学生諸君には、ぜひとも融合教育を学んでいただき、社会から求められる人材に成長していただきたいと願っています。学部入学生も将来、大学院への入学という選択肢もある事を認識していただければと思っています。富山大学では、大学教育を新しい形に変えることで、多くの企業、行政機関、社会から求められる人材を輩出し、地域貢献したいと願っています。また、その成果は着実に出てきています。

With globalization and easy videoconferencing over the web, English conversation has become an essential part of business and research in the working world. For first-year students, the TOEIC exam will be held immediately after enrollment to determine their current English conversation ability. After studying at university, the TOEIC exam will be held again to check your progress. Last year and the year before, exam scores improved significantly. We will provide an opportunity for applicants with outstanding grades to experience foreign culture and education by enrolling in a University of Toyama partner university overseas for a short period of time during spring break. Up to 60 students will receive a subsidy of 100,000 yen per student from the University of Toyama Foundation for their overseas study. We encourage you to take up the challenge of short-term overseas training. Students can also use the self-study system (ALC) for English conversation, so please enhance your own skills through self-study in addition to lectures.
As academics have become highly developed, the traditional four-year school education is no longer sufficient, and there is a strong demand from business and society for more advanced specialized knowledge in graduate school. Those who have obtained a master’s or a doctor’s degree are active in society in positions of responsibility. The University of Toyama has completely reorganized its graduate school master’s program in 2022 and its doctor’s program in 2024. The graduate education program has been reorganized so that graduate education is conducted in multiple schools and integrated knowledge is learned. This has led to a 68% increase in the number of top 10% papers over the past two years as cross-faculty research has progressed within the university. In addition, we offer various scholarship programs for graduate students. We are pleased to announce that more students than we expected have enrolled in our graduate school because of these efforts. We hope that the students who have enrolled in the graduate school today will study fusion education and grow to become the kind of human resources society needs. We hope that students who enter the University of Toyama as undergraduates will also recognize that they have the option of enrolling in graduate school in the future. The University of Toyama hopes to contribute to the local community by producing human resources that are sought after by many companies, government agencies, and society. And the results of these efforts are steadily being seen.

私は、富山大学をおもしろい大学にしたいと願っています。富山大学入学後、多くの事にチャレンジし、新しい変革時代への対応に向けて、自らを大きく成長させ、社会に求められる人材となり、社会で活躍できるように切磋琢磨して下さい。現在の世界状況は極めて不安定であり、紛争が各地で起こっており、経済的にも不安定な状況です。このような時期を乗り越えるために、総合知を習得し、種々のストレスに対して柔軟に対応し、個人戦ではなく団体戦で試練に打ち勝っていただきたいと思っています。
勉強以外に、課外活動を含む大学生活は、一生の友人または一生の師ができる人生にとって貴重な時間です。他学部の学生との交流、富山大学に在籍する約300人の海外留学生との交流、先輩との交流、教職員との交流により、交友関係を是非とも深めて下さい。大学時代は人生の青春期にあたり、最も光り輝く楽しい期間になります。富山県は自然が豊かで海と山があり、どちらも楽しむことができます。また、水がおいしく、海の幸、山の幸にも恵まれています。せっかく富山で学生生活を送られるので、どうか富山県を第2の故郷になるよう学生生活をエンジョイしてください。富山県出身者は県外出身者に対して富山県の魅力を伝えていただきたいです。そして富山大学でおもしろい体験を多く経験していただき、すばらしい青春時代を過ごして下さい。

I would like to make our university to “Omoshiroi” which means interesting, enjoyable or amusing in English. Please challenge yourself in many things, develop yourself greatly to cope with the new era of change, and engage in friendly competition so that you will become a person who is sought after by society and can play an active role in it. The world situation today is extremely unstable, with conflicts taking place in many places and economic instability. To overcome these times, we hope that you will acquire comprehensive knowledge, respond flexibly to various stresses, and overcome challenges not as individuals but as a team.
In addition to studying, university life, including extracurricular activities, is a precious time in your life when you can make lifelong friends and mentors. Please deepen your friendship by interacting with students from other faculties, interacting with seniors, and interacting with faculty and staff. The university years are the most glorious and enjoyable period of one’s life in adolescence. Toyama Prefecture is rich in nature, with both the sea and mountains to enjoy. It is also blessed with delicious water, seafood, and mountain vegetables. Since you are going to spend your university life in Toyama, please enjoy your university life in Toyama Prefecture so that it will become your second home. We hope that those of you from Toyama Prefecture will tell those from outside the prefecture about the charms of Toyama Prefecture. I also hope that you will have many interesting experiences at the University of Toyama and spend a wonderful time in your youth.

これからの皆様と一緒に学ぶことの「おもしろさ」を実感していただけるよう、我々教職員は全力で支援いたします。また、ご家族の皆様には、お子さんの自立性を尊重しつつ、成長を見守り、応援していただきたいと思います。
皆さんの学生生活が、実り多いものになることを祈念し、式辞といたします。

We will do our utmost to support you so that you can realize the “fun” of learning with you in the future. I would also like families to watch and support their growth while respecting their children’s independence. I hope that your student life will be fruitful.

令和6年4月5日
富山大学長 齋藤 滋