光でがんを治療できるロタキサン構造を有する新しい薬の開発に成功
研究のポイント
- レーザー光を用いてがんを治療する光線力学療法用の新しい治療薬として、環状オリゴ糖（シクロデキストリン※1）によって光感受性物質※2を封止したロタキサン型薬剤※3を開発しました。
- 環状オリゴ糖による包接により、光感受性物質の水溶性と安定性が向上しました。さらに、本ロタキサン型薬剤は効率良くがん細胞内に取り込まれ、既存薬よりも約50倍の薬効を示しました。
- ロタキサン構造を有する医薬品は市場に存在せず、本成果は創薬研究に新たな潮流を生み出すことが期待されます。
概要
富山大学 薬学部 薬化学研究室の市川大貴博士課程大学院生、大石雄基講師、千葉順哉准教授、井上将彦教授、同がん細胞生物学研究室の横山悟准教授、周越助教、および同理学部 光化学研究室の野﨑浩一教授、岩村宗高講師らの研究グループは、光線力学療法において既存薬を超える薬効を示すロタキサン型薬剤を開発しました。
本研究成果は、2024年9月26日にバイオマテリアル分野を取り扱う米国学術誌「ACS Applied Bio Materials」にオンライン掲載されました。
用語解説
(※1) 環状オリゴ糖（シクロデキストリン）
グルコースと呼ばれる糖分子が、環状に6～8個連なってできる分子。内側に分子を包接し、その安定性や溶解性を改善できる。食品や医薬品の添加物として広く利用されている。
(※2) 光感受性物質
特定の光を吸収して活性化される化合物。
(※3) ロタキサン
環状分子に軸分子を貫通させた後に軸分子の末端にストッパー分子を接続することで環状分子が軸分子から外れないようになった構造体。
研究内容の詳細
光でがんを治療できるロタキサン構造を有する新しい薬の開発に成功[PDF, 518KB]
論文情報
論文名
Water-Soluble Rotaxane-Type Porphyrin Dyes as a Highly Membrane-Permeable and Durable Photosensitizer Suitable for Photodynamic Therapy
著者
Yuki Ohishi, Taiki Ichikawa, Satoru Yokoyama, Juri Yamashita, Munetaka Iwamura, Koichi Nozaki, Yue Zhou, Junya Chiba, and Masahiko Inouye
掲載誌
ACS Applied Bio Materials
DOI
https://doi.org/10.1021/acsabm.4c00844
お問い合わせ
富山大学 学術研究部 薬学?和漢系
講師 大石 雄基
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