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A群溶血性レンサ球菌M1UK系統株による重症呼吸器感染2例の症例報告が「International Journal of Infectious Diseases」に掲載されました

研究のポイント

  • 欧米諸国でA群溶血性レンサ球菌※1強毒株?M1UK系統株※2による感染事例が増加する中、日本国内での同株による感染拡大が危惧されています。
  • 富山大学附属病院で診療したCOVID-19罹患後?重症溶連菌呼吸器感染症の2事例から分離された菌株が、M1UK系統株であったことが富山県衛生研究所の協力で明らかとなりました。
  • これらの事例は、日本国内でもCOVID-19がM1UK系統株?気道感染を増悪させる可能性を示し、今後のM1UK系統株に関する公衆衛生、診療等で大変重要な報告と考えられるため、プレスリリースに至りました。

概要

A群溶血性レンサ球菌(GAS)強毒株?M1UK系統株による感染事例が2023年以降、世界的に増加しています。今回、富山大学附属病院で2024年2月と5月に発症したCOVID-19後の重症気道感染事例から分離されたGAS株が、その後の解析でM1UK系統株であったことが判明しました。事例1は、COVID-19?二次性細菌性肺炎合併例でした。事例2は、COVID-19罹患9日の細菌性心膜炎?縦隔炎発症例でした。GASによる肺炎や心膜炎は稀であり、いずれの症例も急速な増悪を来しており、強毒株による特徴的な臨床像と診断されました。

欧州では、小児、成人ともにウイルス感染を契機に増悪する気道感染が、M1UK系統株感染事例の特徴の一つとして報告されています。本症例報告では、COVID-19がM1UK系統株の気道感染を増悪させる可能性や、本邦でもM1UK系統株による気道感染へ注意が必要であることを提起しています。
本症例報告は、「International Journal of Infectious Diseases」に2024年9月19日(木)(日本時間)に掲載されました。

用語解説

(注1) A群溶血性レンサ球菌(GAS)
A群レンサ球菌Streptococcus pyogenes(group A streptococcus: GAS)は、血液含有寒天平板培地で培養すると完全溶血を呈する「溶血性レンサ球菌)」のうち、細胞壁多糖抗原の血清型でA群に分類されるもの。皮下に侵入後に急速な感染増悪を起こす壊死性筋膜炎の原因菌として、欧米にて「人喰いバクテリア」と呼称されることもあります。

(注2) M1UK系統株
A群溶血性レンサ球菌のうち、侵襲性と関連したM蛋白を作る遺伝子(emm)のM1型に遺伝子変異が生じたタイプであり、発赤毒素遺伝子(spe)の発現量が数倍におよぶ強毒素産生菌株。2019年に英国(United Kingdom)で発見された後、极速体育直播,极速体育app感染収束後の2022-2023年以降に欧州を中心に同株の感染拡大がみられ、重要な公衆衛生上の課題と認識されるようになっています。

研究内容の詳細

A群溶血性レンサ球菌M1UK系統株による重症呼吸器感染2例の症例報告が「International Journal of Infectious Diseases」に掲載されました[PDF, 378KB]

論文情報

論文名

COVID-19 complicated with severe M1UK-lineage Streptococcus pyogenes infection in elderly patients: A report of two cases

著者

川口アエ1)、長岡健太郎1)、川筋仁史1)、川岸利臣1)、渕上貴正1)、池田佳歩2)、金谷潤一2)
土井智章1)、大石和徳2)、山本善裕1)
1) 富山大学、2) 富山県衛生研究所

掲載誌

International Journal of Infectious Diseases

DOI

https://doi.org/10.1016/j.ijid.2024.107246

お問い合わせ先

富山大学学術研究部医学系 教授 山本善裕

  • TEL:076-434-7245
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富山大学学術研究部医学系 准教授 長岡健太郎

  • TEL:076-434-7246
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