分子シミュレーションによる世界最小電圧で駆動する有機ELのメカニズム解明に向けた一歩
本研究のポイント
?世界最小電圧で駆動する有機ELのメカニズムを分子シミュレーションで解明
?2層積層界面の分子配向状態を分子シミュレーションで解析し、実際のデバイス性能を説明する分子構造を発見
研究概要
富山大学学術研究部工学系応用化学コースの石山達也教授、電気電子工学コースの森本勝大准教授、中茂樹教授の研究グループは、世界最小電圧で駆動する有機ELの駆動メカニズムの一部を分子動力学シミュレーションにより解明しました。
富山大らのグループではこれまで世界最小電圧で駆動する有機ELを開発してきましたが、駆動メカニズムの肝となるドナー/アクセプター(D/A)界面の分子状態は未解明でした。本論文ではドナー分子にルブレン、アクセプター分子にペリレン誘導体(PTCDI)を使用した有機ELについて、異なるアルキル側鎖を持つPTCDIにおけるD/A界面の分子状態を世界で初めて分子動力学(MD)シミュレーションにより解析しました。その結果、アルキル鎖8個のC8-PTCDIにおいて、D/A界面の分子距離が最小になることを明らかにしました。これは過去に実際のデバイスで得られてきた結果と矛盾しない結果であり、今後の新しいD/A界面設計や有機ELデバイスの性能向上に分子シミュレーション技術が強力な解析手法になることを意味しています。
本研究は、科学研究費助成事業(基盤研究(B)21H01878、 24K00921)の一環として行われ、AIP Publishing(アメリカ物理学会)が出版する国際学術誌『The Journal of Chemical Physics』の10月23日付(オンライン版)に掲載されました。また、富山大学論文掲載料(APC)支援制度を受けてオープンアクセスとなりますので、だれでも無料で閲覧できます。
研究内容の詳細
分子シミュレーションによる世界最小電圧で駆動する有機ELのメカニズム解明に向けた一歩[PDF, 811KB]
論文情報
論文名
Molecular dynamics study of N,N’-di-n-alkyl-3,4,9,10-perylenetetracarboxylicdiimide (PTCDI)/rubrene interface: why the charge transfer at the interface is optimized depending on the alkyl chain length of PTCDI
著者
Tatsuya Ishiyama、 Masahiro Morimoto、 Shigeki Naka:
掲載誌
The Journal of Chemical Physics, 161, 164706 (2024)
DOI
https://doi.org/10.1063/5.0232607
お問い合わせ
富山大学 学術研究部工学系応用化学コース
教授 石山 達也 (いしやま たつや)
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富山大学学術研究部工学系電気電子工学コース
准教授 森本 勝大(もりもと まさひろ)
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