富山大学 理学部 学部案内2025
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 計算機器やアルゴリズムの発展により、計算不可能と思われていたものが昨今計算可能に変わりつつあります。例えば、観察から得られた画像データを、コンピュータに認識させて人間が行うような認知や判断をさせる研究が数多く報告されています。このようなデータを活用した研究の発展により、サイエンス全体のあり方が変わろうとしています。 本プログラムではこのような最先端の研究を理解するための授業が組まれています。2年次では、数学と情報に関するコンピュータによる細胞の輪郭抽出アルゴリズム 数学とコンピュータを用いた研究の一例を紹介します。 我々のような多くの生物は、細胞を最小単位として成り立っています。右の図(a)はある組織の断面写真で、シャボン泡のような構造がみえると思います。実は泡一つ一つは細胞の輪郭に対応しています(図(b)の点線部分)。この細胞の輪郭を、コンピュータに自動識別させることは可能でしょうか?答えはYesです。図(c)はそのアルゴリズムを構築し、コンピュータで計算させたものですが、赤線のように細胞の輪郭を抽出することができています。これまで、細胞の輪郭の抽出は人間が手作業で膨大な時間をかけて行っていましたが、このような自動アルゴリズムが発展することで大幅に時間の節約をはかることができるようになりました。このような研究の延長には、細胞の輪郭抽出による生物の形づくりの原理解明、異常な形をした細胞による病変の検知等、様々な応用が期待されています。生物のリズム現象とBZ(ベロウソフ?ジャボチンスキー)反応 心拍の周期、呼吸の周期、睡眠と覚醒の周期など生物には様々なリズムがあります。これらのリズム現象は生物特有のものですが、どのようなメカニズムで生じているのでしょうか?この問に皆さんが高校で実験したような化学反応が肝になっているのではないかと考えた人達がいます。図(a)のシャーレの中では、液にいくつかの化学物質が溶けています。この化学物質のうち、“フェロイン”という物質は還元状態と酸化状態のそれぞれで赤色と青色になることが知られていますが、それが同心円状のパターンとなって観察されます。この化学反応はBZ反応と呼ばれていて、生物のリズム現象を説明する一つの実験モデルとして研究されています。BZ反応は、非常に複雑な反応ですが、その反応のうち大事な変数だけに着目して数理モデルを立てることができます(図下部参照)。この数理モデルをコンピュータシミュレーションしたものが図(b)ですが、実際のBZ反応の特徴を捉えていると思いませんか?この例のように、複雑な現象をそのまま扱うのではなく、より簡単な対象に置き換えて数学的に研究することで、本質が見える場合があります。本プログラムでは、このような数理的考察およびコンピュータシミュレーションの技法を学ぶこともできます。基本的な内容を学び基礎力を身に付けます。3年次では、理学部DS(データサイエンス)科目や文理融合DS科目を通して、2年次に学んだ内容が、社会科学、自然科学、工学などの分野でどのように活かされるかについて学ぶことができます。また、課題解決型授業を受けることによって実践的な知識を修得することができます。4年次には、それまでに学んだ知識を活かし卒業研究に取り組みます。プログラム紹介/数理情報学プログラム10カリキュラム研究紹介

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