富山大学 理学部 学部案内2024
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昼憩食実験休 自然界には異なる生き物が関わり合いながら生活する「共生」という関係が存在する。特定の生き物に住み着き、栄養分を奪い取る「寄生」はその一つだ。例えば、体長わずか2ミリの「マダラケシツブゾウムシ」。この昆虫が植物であるアメリカネナシカズラに寄生すると、植物の一部がこぶのように膨らむ。杉本さんは、植物にできる「虫こぶ」の研究を通して、両者の関係を探っている。↑マダラケシツブゾウムシを発見した。光合成によって作られたデンプンなどの栄養が、ゾウムシの幼虫の成育を助けていると考えられている。杉本さんが先輩とともにまとめた論文は、イギリスの学術誌Scienti?c Reportsに掲載された。 現在、杉本さんは、虫こぶの形成を昆虫側と植物側の双方から分子レベルで解き明かす作業に取り組んでいる。 この研究に強く魅力を感じたのは、大学4年時の初めての実験で期待通りの結果を得たことがきっかけである。この成功体験が杉本さんを興味深い虫こぶの世界に引き入れた。杉本さんが扱うアメリカネナシカズラは、環境が変わるとすぐに枯れてしまう。そのため、世話は念入りに行っており、特に水の管理には気を遣っているそうだ。 昆虫と植物の飼育?栽培を通して、小さな変化を見逃さず研究を続けるコツは、余暇時間を楽しみ、メリハリの利いた生活を送ること。これが、研究で失敗しても気持ちをフラットに保つことにもつながると話してくれた。この研究紹介記事は以下の授業で作成したものです。「科学コミュニケーションII」主講師:元村有希子(毎日新聞論説委員)担当教員:川部達哉(数学プログラム)、島田 亙(自然環境科学プログラム)16:00 16:30 20:00 24:00インタビュアー横道 彩夏、春日 琴海、中川 陽、畠山 栞植物の世話虫こぶ実験データ整理明日の実験等の準備夕食余暇帰宅体のケア就寝研究者レポート28生物と共に進める研究〈杉本さんの1日〉9:30 11:30 12:00 後輩に向けて一言 「今の研究ができているのは、田努先生をはじめ、先輩、同級生、後輩など様々な方のご指導とご協力のお陰であり、自分だけの力ではないよ」と杉本さん。研究に関わる全ての人へ感謝を忘れないことが大切であるとのアドバイスが印象的だった。学生による学生のための 研究者レポート 理学部の若き研究者たちの最新情報を公開このページでは、学生が先輩たちにインタビューし、研究内容を分かりやすく紹介します。体長2mmの小さな虫が植物を変える虫こぶとは 虫こぶは、昆虫などが分泌する物質によって出来る。果実のように膨らんだ組織は、昆虫にとっての栄養豊富な食料貯蔵庫や、天敵から身を守るシェルターとしての役割を果たす。植物にとってはいささか迷惑だが、昆虫にとっては楽園になる。 特定の植物にしか虫こぶを形成しないことも分かっている。つまり、マダラケシツブゾウムシとアメリカネナシカズラはきわめて特別な関係で結ばれている。光合成を活性化 謎の多い虫こぶは、一般的に樹木に作られることが多いため、室内で育てながら実験?観察することは難しかった。杉本さんが所属する田研究室では、実験室で周年飼育?栽培が可能な対象として、マダラケシツブゾウムシとアメリカネナシカズラに着目し、虫こぶを安定的に形成できる実験系を構築した。これらを用いた研究から、マダラケシツブゾウムシがアメリカネナシカズラに寄生すると、虫こぶの中で光合成が最大43倍も活発になること杉本 凌真(すぎもと りょうま)大学院理工学教育部生物学専攻(R4年度 修了)出身地:奈良県川上村趣 味:釣り、野球、カラオケ

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