富山大学 理学部 学部案内2024
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 自然環境を知るためには、高校までに学習した物理学、化学、生物学、地学を応用した、総合科学的な見方が必要不可欠です。自然環境科学プログラムでは様々な分野の教員が所属しており、学生は専門科目での授業を通じて自然環境を多角的にみる力を養うことができます。学生実験では、化学物質の定性?定量分析、土壌や河川水の分析、微生物の培養?プランクトンの観察など幅広い分野の実験が行えます。また、野外実習では富山の豊かな自然を対象に、現地における試料採取や測定といったフィールドワークの基礎を学ぶことができます。卒業論文研究では、指導教員のもと環境に関する研究課題に取り組み、専門的な知識と技術だけでなく、今ある問題に対して主体的に動く力を身に着けます。本プログラムでは環境科学に対して強い好奇心と学習意欲をもち、苦手な科目もあきらめずにこなす忍耐力と頑張る力を持った学生が来てくれることを期待しています。 人間活動の規模の拡大と多様化にともない、地球温暖化ガスの放出や大気汚染、水質汚染、土壌汚染などの多様な環境問題が顕在化したため、環境を正しく評価?修復する手段や思考がますます必要とされています。自然環境科学プログラムでは、化学、地球科学の側面から環境問題へアプローチし、水や土壌に含まれる微量有害成分や環境汚染化学物質の簡便迅速な分析方法を開発し、富山県の土壌や河川水、海水、大気の環境を調査しています。また、排水中の有害成分を除去するための基礎的な研究も行っています。さらに、微量元素や安定同位体比を用いた、陸域と海域の環境動態解明に関する研究を通して地球規模の環境問題にも取り組んでいます。 また、富山県内の豊富な地熱資源の利用を探るために地下水?温泉水の分析や、我が国周辺海域の海底熱水鉱床探査技術の開発を通して、環境に配慮したエネルギー?鉱物資源の開発を目指し、持続的な経済発展にも貢献します。 一方、私達の生活は多様な生物に支えられて成立しています。それは汚染物質のバイオレメディエーションや重油分解細菌のような微生物の活用など、環境問題の対策も例外ではありません。それには生物多様性の保全が必要であり、そのためには生物と環境の相互作用や、生命の歴史などを知ることが必要です。自然環境科学プログラムでは、生物と環境との相互作用についての理解を深めるため、生物機能の仕組みについて、細胞レベルから生物集団レベルまでの幅広い研究を行っています。例えば、生物の環境ストレスに対する防御機構の解明や植物が環境の変化をどのように認識しているのかについての研究、大気?河川水?海洋?地下水中の微生物群集構造についての研究、微生物を用いた環境水の汚染評価?修復方法についての研究、植物と訪花昆虫の関係についての研究、立山における地球環境変動の影響についての研究などを行っています。また、哺乳動物や寄生虫などの野生動物の生態や保全、生命の歴史について理解を深めるため化石を用いた古生態や生命進化について研究を進めています。 さらに、私達の住む地球には、大気や水が存在します。大気中に浮遊する微粒子(エアロゾル)やそれが核となって出来る雲は、さまざまな気候影響を起こしています。それらの影響を解明するため、物理学の視点からその影響の解明に取り組んでいます。また、大気中の水分は、氷晶から雪結晶となり、地上に雪や雨として降ってきます。雪はその成長により多様な形態を持っており、その形態形成メカニズムの解明に取り組んでいます。 富山県には標高3千メートル級の立山があり、春には6mを超える積雪が見られます。この積雪には、冬期間の降雪だけでなく、立山にやってくるさまざまな起源の微粒子や成分が含まれており、地球環境のタイムカプセルとしてその解明にも取り組んでいます。プログラム紹介/自然環境科学プログラム海洋観測河川の流量測定定性分析実験河川調査実習植物と昆虫の相互作用授業風景(実験発表)立山での野外実習重油分解菌立山の積雪調査の様子雪の結晶18カリキュラム研究紹介

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